東大 生物情報学科、学部生の備忘録

東京大学の学生です。日々の気づき、学び、つまづいたことをメモにします。

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AI 絵師・AIイラストについて、東大生が思うこと

はじめに

最近、とても流行っている AI イラストについて、話したい。 Stable Diffusion を使う場合、機材さえ持っておけば、一定クオリティのイラストを高確率で生成できてしまう。したがって、AI-made コンテンツがネットに溢れかえってしまっている。

実際に、7月前半にて AI イラストを一部で禁止する発表を行う前の pixiv は信じられないくらい AI イラストで飽和していた。 そして、高評価を得ている AI イラストは大体、版権キャラの二次創作である。僕目線、彼らは絶対に civitai に落ちているキャラ LoRA を使い回しているだけだ。

盗んだもので金稼ぎを行うような AI 絵師に対して、思うことや伝えたいことをまとめてみる。また筆者自身も AI イラスト生成をじっくりやってみた経験があるので、それに基づいて述べる。

頑張っている AI 君。

AI イラストの現実

冒頭でも触れた通り、庶民でも一定のクオリティのコンテンツを超高速で生成できるのが AI の強みである。

クオリティをさらに上げようとすると、機材のスペックが必要になることはもちろん、Stable DIffusion に投げる prompt を工夫したり、seed 値をいじったりする必要がある。(高レベル AIイラスト とでも呼ぼう。)

しかし、pixiv をはじめとしたイラスト掲載サイトを見て思うのは、ほとんど 99 % の人々はそんなに凝ったことをしていないということである。 彼らがやっているのは、

  • civitai に落ちている LoRA を大量に集めて、掛け合わせている
    • 10 個の LoRA があれば、2の10乗 = 1024 通りも組み合わせが考えられる。
  • 有名人や有名・人気キャラの LoRA を自作し、それを個性・強みとしている

こんなところであろう。

もちろん、超ハイスペックな機材を集めて、seed や prompt に多大な時間をかけてイラスト生成をしている方もいるのはわかっている。しかし、ハイスペックな機材の値段を考えたらわかるように、そういった機材をバッチリ揃えている人は少数派である。大多数は、普通のデスクトップ PC で生成しているだろうと思う。

AI イラスト生成に必要な工数、努力

AI イラスト生成に必要な過程は、上で述べた通り、

  1. 書きたいキャラ、構図、雰囲気をイメージ
  2. キャラ等の LoRA を入手する
    • 多くの人は Civitai から取ってくるだけ
    • 一部の人は自作する。しかし、自作する場合も誰か他の人が手で描いたイラストをネットから拾って、colab とかでちょちょっと学習するだけだ。
  3. Stable Diffusion に LoRA を全てぶち込んで、プロンプトをいじる
    • prompt を考える。negative prompt もきちんと設定する
      • 大概、ネットに上手い prompt の例が載っているので、それを参考にするだろう
    • LoRA の強さとか、prompt の各 word の強さとかをいじる。
      • words の順番にもこだわる人はいるだろう
    • ControlNet を使う人もいるかも
  4. (Optional) Seed 値をいじったり、他の Automatic1111 の拡張機能を利用してさらにイラストの質を改善する。

といったことになる。 読者の方で、他に思いつく工程があれば、ぜひコメントで教えていただきたいです。

このことから思うに、AI イラスト生成において、 創造性が必要とされる工程はないのではないだろうか。 創造性がいるとすれば、「1. 書きたいキャラ、構図、雰囲気をイメージ」くらいであろう。他は、何度も出力させてその中から好みのイラストが出てくるのを待つだけ。

彼らのために弁解するとすれば、好みのイラストが出る確率を上げるために諸々の追加設定をしているのだろうが、「確率を上げている」だけの操作である。 この操作はどう見ても創造性は不要じゃないだろうか。出力されるイラストと自分の好みを差を見て修正するだけだ。

話がそれちゃうが、 そう思うと、AI イラストというのは期待値最大化問題であって、手書きイラストというのは、決定論的な問題とみなせる気がする。 いや、欲しいイラストが解であるとして、手書きイラストでは決定論的なアプローチになっているが、AI イラストではその計算資源を利用して、乱択的に解いているのだろう。

また、この工程をもう一度見てみるとわかるのが、

  • AI イラスト生成は、他のコンテンツを利用しているばかり

という点である。これがみんなに嫌われている主な理由になるはずだが、

  • LoRA は civitai などから取ってくる
  • また LoRA そもそもが他のコンテンツを勝手に取り込んで学習した結果である
  • prompt についてもネットに落ちているものを参考にすればある程度戦える
  • そもそもの model (Chilloutmix とか)も、大量のデータをネットから無断で取り込んで学習している

といったように、多くの場面で他コンテンツに依存している。 LoRA を使っている時点で、99 % の確率で、「盗用」のようなことをやっていると思った方が良い。

こんな厄介な AI イラストであるが、これからどうなるだろうか。

AI 絵師さん

ここからは AI 絵師さんについて、述べたい。

pixiv の記事( AI絵師 (えーあいえし)とは【ピクシブ百科事典】 )によれば、

AI 絵師

筆の代わりに特定の単語を組むことによってイラストを作り出しており、pixivでは既に多くのAI絵師が作品を投稿している。

しかし、「絵師」とは言うものの、実際にその人物がやっていることは「AIに指示となる文章を入力しているだけ」でしかなく、絵師と呼べるような行為をしていない、絵師ではなく「イラスト生成AI利用者」に過ぎないだろう、と言う声も多い。 AIによる画像生成で思い通りの画像を生成させるための文章選択には特有のコツのようなものが必要であり文章を入力しているだけではない、という声(主にAI絵師を名乗る側から)もあるが、やはりこれもやっていることは「開ける引き出しの選び方」であって「引き出しを作る事」ではないため絵師としての技術とは全く違うとの見方が強い。

とのことであり、イラスト生成 AI 利用者を意味すると思ってもらって構わない。

AI 絵師の気持ち

僕も実際に手を動かし(GPUを動かし)、AI イラストを生成してみた。 そこで思うのは、時間をかけて作ってみても、

  • AI によって生み出したこのイラストを自分の作品だといって自慢する気はしない。本当にイラストレータに失礼だ。

という申し訳なさ、後ろめたさだけである。

僕が特殊なのかもしれないが、勝手に他所のイラストを学習してできた LoRA を使っていて、かつ、今日のイラストレータによる AI イラストに対する猛反発を知っていれば、とてもじゃないが尊大な態度は取れないのじゃないかと思う。

本当のイラストレータへの敬意があれば、そういった絵師さんの努力を踏みにじる可能性のある AI イラストを堂々とネットに公表し、あわよくばお金稼ぎに利用しようなどとは思わないはずである。

したがって、この段落で僕が言いたいのは、

  • 多くの AI イラスト生成者(AI 絵師)は、本当のイラストレータに対して後ろめたさを少しは感じているはず
  • 一部のイかれた人が、イラストレータに敬意を払うことなく、金や承認欲求のために暴走している
    • 少数のイかれた人がいるだけでも、AI イラスト生成の火力によって、短時間で大量に生成されてしまう。

ということである。

尊大な AI 絵師に告ぐ

フィヒテっぽく。)

下の段落でも述べるのだが、AI イラスト生成自体は罪ではない。 したがって、謙虚で後ろめたさを感じている、正常な AI 絵師にいうことはない。

僕が伝えたい相手は、尊大な AI 絵師である。それは、「AI イラストで承認欲求を満たしたり金を稼いだりする AI 絵師」のことである。こういった人々に、伝えたい。

伝えたいのは、以下である。

  • 金を稼ぐな
    • 人の作品を盗んで初めて成り立つのが AI イラスト。
    • 盗品で金を稼ぐな。
  • ネットに公開するな
    • 盗品を利用して生み出したコンテンツで、自分を飾って、恥ずかしくないか
    • (普通にアドバイスとして、)今後の国の指針次第で捕まる可能性もある
  • 謙虚でいろ
    • 人様のものを使って生み出しているのだから、感謝しなくてはならない。
    • かたじけない、と思え。

AI 絵師よ、謙虚にあれ。

東大生の思う、「AI イラスト × 日本」という可能性

ここまで結構 AI イラストを否定してしまったかもしれないが、 僕は別に「Stable DIffusion 消えろ!!」と思っているわけではない。技術イノヴェーションをいちいち否定しているようでは、日本はますます世界に遅れをとってしまう。

また、気のせいかもしれないが Civitai 等を見ると、日本人ユーザ・日本アニメが目立っているように見える。 (盗用でムカつくのは事実であるが、キャラ LoRA が他国で広がって、結局回り回って日本の原作に帰ってきてくれたらいいなとか思ってるけど、一部の国の連中は自国のキャラとして利用しかねないのでやっぱり嫌か。) 日本文化を考慮すればわかるように、日本人のアニメ・イラストへの思いは外国人のそれより強いはずである。したがって、僕は、うまく利用すれば AI イラストは日本の強みになりうるのではないかと思っている。 下手な使い方をすれば、本当のイラストレータとの分断が生じて、マイナスの影響しか与えないが、僕はいいやり方があるんじゃないかと思う。(今後別記事で書きます👍)

新しいものに拒絶反応を示してばかりでは、遅れをとる一方である。日本強みを消さないように、新技術をどんどん取り入れていく必要があるだろう。

その点では、AI イラストを用いてお金稼ぎをする、つまり、ビジネスを動かす必要はあるとは思う。しかし、そのためには内部のゴタゴタを解消する必要があり、多くの議論や適切な法整備を要す。

AI イラストを巧みに利用し、アニメ業界において、日本が他国との差をさらに広げてほしいと思う。 強い日本を取り戻したい。

まとめ

自力でまとめあげるのがしんどかったので、 毎度恒例 ChatGPT にやってもらう。

ChatGPT による本記事の要約

AIイラストはStable Diffusionの技術を使い、一定クオリティのイラストを簡単に生成できるため、ネット上に多くのAI作成コンテンツが存在する。しかし、多くのAIイラストは版権キャラクターの二次創作であり、元の作品に敬意を払わない批判もある。AIイラスト生成には創造性が必要ないとの意見もあり、他のコンテンツを利用している点が問題視されている。

AI絵師として活動する者もいるが、多くは他のイラストを学習したLoRAを利用しているため、尊大な態度は避けるべきだ。AIイラスト生成は技術革新として否定すべきではなく、日本の強みとなる可能性があると考える。ただし、適切な法整備や議論が必要であり、アニメ業界での活用においては元の作品に対する敬意を保ちつつ進めるべきだ。強い日本を築くために、新技術を取り入れながら内部の問題を解決し、日本の差別化を図っていきたい。

ふむふむ、結構いいですね。これからも使おう。

最後に

実際に AI イラスト生成をやってから議論した。 自然言語から Image を生成できるのは、本当に魔法みたいで楽しいのだが、調子に乗ってはならない。初めの感動の勢いで、自分はすごいことができるのだ!と思って偉そうな態度を取ってはならない。

大きな技術革新を大学生の間に経験できて、嬉しく思う。 これからも AI イラスト問題には関わっていきたい。

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