東大 生物情報学科、学部生の備忘録

東京大学の学生です。日々の気づき、学び、つまづいたことをメモにします。

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就活早期化について、理系東大生が思うこと

はじめに

就活が早期化しすぎである。

就活のための大学生活になっていないか?わざわざ東大に入って、すぐに就活に熱中して、大学生活が勿体無いと思わないのだろうか。

企業もそうである。貴重な東大生の学生生活に、早いタイミングから介入し、自分の会社に勧誘するためにアプローチをして、学生が学問に打ち込む時間を減らして満足しているのだろうか。

僕が就活の早期化について思っていることを述べようと思う。

就活の早期化の実態

この記事がわかりやすい:

https://news.yahoo.co.jp/articles/5de124ec83a41d15eab077237afa0ff3d9777ebc

法律で早期インターンの成果を採用基準に含めないといったルールもあるのだが、25 卒からはそのルールがかなり緩くなるらしい。したがって、早期インターンが採用に明確に関わるようになり、25 卒以降はさらに就活が早期化すると見込まれる。

また、政府は専門学生の就活をさらに早期化させている:

就活新日程、早期化に拍車も 「専門人材」3カ月前倒し - 日本経済新聞

この法律はそもそも専門学生の定義が曖昧らしく、「専門学生」の解釈によってはグレーな採用も増えるだろう。

京大・東大の学生が大学生活で重視していること

京大が、京大生 vs 「一般的な大学」のレポートを出している。非常に興味深い。

https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/262780/1/2020_soc_lab.pdf

このレポートの結果をすごく簡単に求めるなら、

  • 京都大学の学生は、ビジネスで必要な能力よりも、非ビジネス能力を学ぶ機会を大学に求めている
  • 京都大学の学生は、実学志向よりも、学術志向の程度が強い。
  • 一般的な大学では、これらの差は少なく、ビジネスに必要な能力を求めていたり、実学志向であったりといった学生も等数いる。

といった感じである。

ここ数年の政府の動き

どうも多くの文献を見ている以上、

「学術軽視・実学重視」

といった姿勢が見受けれてしまう。

そして、先ほど挙げたレポートでは、学術軽視・実学重視が学生の需要にあっているかどうかを調査していた(結果ははっきり出なかったよう)。

ここでさらに思うのは、

大東大は、学生の需要に合わせるような決定ばかりで良いのだろうか、という点である。

友達が東大や京大に行くから自分も行っただけという学生は、とてつもなく多い。そういった学生には、むしろ大学側が取るべき姿勢を示してやるべきだと思う。

なぜなら東大・京大は、研究を行う大学として日本を牽引する存在であり、決して学術を軽視してはならない。そんな大学が、学生の「実学重視」のスタンスに歩み寄ってばかりでは、確実にこの国の学術レベルは落ちるだろう。陳腐な国になるのは間違いない。

東大を見て思うこと

以前の記事、

ut-bioinformatic.hatenablog.jp

でも述べたのだが、

  • 文系の学生は特に、大学 2 年生から、講義や部活動・サークルよりも就活を優先するケースが見受けられる。
  • 経済学部はなんと、週に三コマ(5 hours)しか講義がなく、みんな就活に取り組む傾向がある。
    • 授業を主体的に増やすことはできる。
  • 教育学部の学生は、大変そうなイメージ。
  • 法学部の学生は、法曹を目指すかどうかで圧倒的にしんどさが変わっている。授業は基本的に参加せず、メモを共有しているだけ。
  • ちなみに理系の学部は確実に、週に 20 コマ以上はある。

これには正直がっかりしていて、特に経済学部で週に三コマしか授業を受けなくて済むようにしているのは大学側にも問題があると思っている。 それはつまり、大学側は、「2年生後半くらいから(進振りのあとから)、就活やりなよ〜」というメッセージにしか見えないのである。大学側はこの意味で、学術を軽視していないだろうか。

いくら進振り直後の専門知識ほぼゼロの学生だからといって、週に三コマで許しているのは、

  • その学問がそれほど簡単か
  • 東大側が教育コストを削減するためにある意味学生を切り捨てているか
    • 経済学部は数百人いるので、全員が多くの授業をとったら、先生方の負担が大きくなる。

のどちらかにしか思えない。 大学側は、「学生の主体性」に任せて必修授業を減らしまくるのではなく、大学が主体的に実学を学ばさせる、つまりコマ数を増やす必要があると思う。

ただ、これはほんの一例に過ぎず、経済学部では「ゼミ」があるため、そちらにどれだけコミットしているかどうかも、忘れてはならない観点である。

就活の早期化が与える影響

早期化によって、

  • 学生は、より早く実学を身につけ、より早く就活を始める。
  • 企業は、優秀な学生を他社に取られないように、より早く募集をし、インターンを取る。
  • 早い者勝ちであるため、さらに早期化が進む。

といった現象が起きている。 学生側が、早期化した就活に対応するために実学を優先して学んでしまう。 つまり、今までいろいろ述べてきたが、 「就活の早期化は実学重視・学術軽視の姿勢を助長している」 と考えられる。

これは、研究を中心的に行う大学(東大、京大、etc)においては深刻な問題である。

また、こういった姿勢は「文系学生」に多い。理系学生は少なくとも大学院に行くという文化があるのに対して、文系学生は学部 3 年生からは周りが就活の話を始めるので、院試対策をする前にどうしても就活を始めてしまうのだと思う。 私としては、サイエンスと人文学は両者ともに等しく重要であり、いずれも蔑ろにしてはならないと思っている。 文系の院生が増えたらいいなと思う。 話が逸れてしまった。

早期化が早期化を呼び、歯止めが効かない現状では、このままいけば高校生から就活をする未来が待っているかもしれない。

考えられる解決策

早期化を食い止める対策としては、

  • 就活の「早い者勝ち」という側面を弱めること
  • 就活の開始タイミングを明確に取り決め(現状、曖昧)、違反する企業を厳しく取り締まる
  • 大学当局は、入学直後の学生を対象に、学術軽視をしてはならないとより一層伝える必要があるかもしれない。
    • どうせ、就活を前にすると実学重視になってしまうので、初めは学術重視よりでも良いのではないかな。

といったことが思いついた。 しかし、具体的な方法はやはり難しい。 政治家の方に、取り上げてほしいと思う。

まとめ

長くなってしまったし、話も逸れてきそうなので、まとめる。

  • 現在の日本では、就活が超早期化しており、学生はすぐに就活を始めざるを得ない。また、ルールが曖昧なため、グレーな方法を取る企業も多い。
    • 国自体も就活の早期化に危機感を持っている様子ではなく、2023/4 には専門学生の早期就職を推し進めている。
  • 東大・京大は、日本を、世界を牽引する研究を行う大学である以上、大学として主体的に学生を学術世界に引き摺り込む方法を取っても良いのではないか。
    • 他の一般的な大学は、職業大学のような役割を全うするか、研究を行う大学として頑張るか、どちらでも良いと思う。
  • 就活の早期化は「学術軽視・実学重視」を助長する。
    • 文系の学生で特に顕著であり、人文学の発展が危ぶまれる(と思う。)
  • 早期化を食い止めるには国がまず問題として取り上げなければならない。
    • 実学重視ばかりでは、長い目で見ると国力は必ず低下する。

優秀な学術者としての可能性を秘めた学生を、国や企業が煽って就活という実学に走らせ、その可能性を潰されないようになれば嬉しいと思う。

最後に

結構いろんな方向から非難されるような内容を書いてしまった気がする。 しかしこれは論文ではなく、たかがブログであるし、きちんとしたソースを示す必要もないし、完全なる事実だけを書かなければならないというルールもない。 僕なりにはなるべく事実を書きたいと思って調べ物も行ったが、間違っている部分はきっとあると思う。

後半では学生の気持ちを蔑ろにしてしまった議論になっていたようにも思う。

しかし、日本が発展するためには僕はどうしても「東大京大には学術重視の姿勢を貫き通し」てほしい。

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